8人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
「ジェローン殿、奥様、長旅お疲れでしょう。
どうです? この近くに実に美味なる『長崎ちゃんぽん』を出す清国料理店があるのですが」
「長崎チャンピオン?」
「いえ、チャンポン」
ジェローン氏、少しうつむき加減に考え込みやす。
「お、おお……その『ちゃんぽん』なる物は、確かチャイニーズの生み出した麺料理であったと記憶しておるのですがー」
「さすがはジェローン殿。その通り!
長崎近海のエビ、イカなどの魚介と野菜を、豚の骨で煮込んだ出し汁で合わせ、中華の麺にかけたものですよ。清国と日本の食の融合です。
召し上がったことはおありですかな?」
「い、いや。し、しかしチャイニーズと言えば、怪しげなる秘薬を日常的に煎じ、事あるごとにまじないと共に用いるそうでは、あ、あ、あーりませんか?」
「ハハハハハ! ご冗談を。少なくとも、ここ出島にはその様なまじない師はおりませんし、ちゃんぽんには秘薬など含まれておりませんよ」
ジェローン氏、私生活では超の付くほど心配症なのが、たまにキズなのでありやした。
最初のコメントを投稿しよう!