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「せ、せっかくのお申し出ですが、私は油っぽい物は苦手でして」
「フッ、意気地なしね。あなた」
イザベラ嬢が鼻で笑います。伊右衛門(略した)殿も苦笑い。
と、そこに
「食いねえ! 食いねえ! そば食いねえ!」
天秤ばかりに小箱を載せた、イキでいなせな若い衆が、お三方の前に現れ、声をあらん限りに張り上げます。
「おいおい、騒々しいぞ。誰かと思ったら庄三郎ではないか」
「おおっとー! こいつは伊右衛門殿」
「あ、お前も略したな……」
「へ? 何のこってす? ま、それはそうと、こちらのゲエジンさんはどこん人です?」
「阿蘭陀国よりいらしたばかりの、ジェローン夫妻だ」
「オランダ! この人、どこんだ?……おらんだ!! ひゃはははは」
「これ! 失敬だぞ、庄三郎」
夫妻、この若者が腹を抱え笑うのを、ただただポカーンと見ておりやした。
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