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「ここは『時の郵便局』の分室です」
微笑みながら凛とした声で答える。
少女は人形のように整った顔立ちに艶やかな黒髪を伸ばし、真っ赤なワンピースを着ていた。
透けるほどに白い肌にあどけなさの残る面影。――歳はせいぜい十六、七か。
ニコリと穏やかに夫に微笑みかける。
「時の……ああ、葉書のやつか?」
「はい。葉書を出させて頂いた者です」
ウフフ……少女は可愛らしく笑うと、クルリと背を向ける。
「あなたはこう思ったのではありませんか? ……あれは詐欺か何かだと」
夫は白く発光する不思議な部屋の隅に立っている。
反射的に振り返ってドアを確認する。
だが、出入り口は無いようだった。
見渡せば、窓も一切ない。つまり、全面『壁』に囲まれていた。
「ちょっと待て。……ここはどこだ? ……俺は閉じ込められてるのか?」
すると少女はまたクルリと向き直る。
そして穏やかな口調で話した。
「ここはあなたの夢の中です。……夢から覚めれば出られるから安心してください」
夢――? ……すぐには理解できなかった。
だが、壁しかない特異な部屋を見る限り、夢なのだと信じるより他になかった。
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