第1章

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「ねぇ、そうやって泣くのもうやめない?どうせ、意味なんてないんでしょ。」 付き合って1年も経つと、少しづついろんな事が溜まってきていつものことが我慢できなくなる。 「酷い。」 「じゃあ、理由を教えてよ。」 俺は声を上げるでもなく、たんたんと告げた。 「たっちゃんには何も分からないんだー!」 いつものヒステリー。 いつもの俺なら呆れてそこでやめて、無理やり寝ようと努力するんだけど、その日の俺は歯止めが効かなかった。 「だから、理由を教えてって。なんで泣いてるのか分からない。俺はいつもなんで君がそんなに悲しんだり怒ったりしているのか全然分からないんだよ!」 真夜中だという事も忘れて俺も彼女も声を荒げて言い合いをしてしまったんだ。 コンコン 不意に窓が叩かれている事に俺が気づく。 「ちょっと静かしにして。何か聞こえない?」 「そうやって話そらす!」 まだ喚いてる彼女をよそに俺は音の出処を探す。 どうやら窓の方から聞こえる気がすると思った俺はカーテンを開ける。 「きゃっ。」 カーテンを開けると、窓の外にいた人物に彼女が驚いて小さく悲鳴をあげる。 正直俺も驚いたよね。 驚き過ぎて声出なかったよね。 窓の向こうの人物は、俺たちの驚きにも関わらずニコニコと呑気に手を振っていた。 「何、このおじさん。」 「あ、この人は隣の部屋に引っ越してきた人。」 そこに居たのは、いつぞや挨拶にきてくれた隣人の沢さんだった。 沢さんはニコニコしたまま開けろと言わんばかりに窓の鍵に向かって指を指すジェスチャーをしていた。 瞬時に脳内に色んな考えが巡る。 開けてもいいものか。 人の良さそうに見えるこのおっさん、実は凄く悪い人で襲われたりしたらどうしよう。とか。 もし、襲われたら俺に勝てるのか。とか。 そもそも、夜中に窓から訪ねてくるとか怪しすぎるだろう。 少しの間フリーズして沢さんの顔に張り付いたような笑顔を見つめてた。 彼女も、沢さんを見て固まっていた。 しかし、いつまでそうしても帰る気のなさそうなおっさんに負けて俺は窓を開けてしまった。 「やー、お隣さん。大丈夫?凄い罵り合いが聞こえたから、ご近所さんに警察なんか呼ばれる前に止めにきたよ?。」 「あ、ども。すいませんでした。」
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