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とりあえず謝ったよね。
うん。
夜中に大声だして悪かったと思うよ。
沢さんはわざわざ忠告しに来てくれたんだよね。
窓から。
おかしいだろ。
普通に玄関から来ればいいじゃん。
「びっくりしましたよ。何故、窓から?」
「やー。普通に玄関からピンポンして入って来たら面白くないかなって思ってね。まーでも、喧嘩終わったみたいで良かったよ。じゃ、仲良くな。おやすみ。」
沢さんはニコニコと手を振って隣の部屋に戻って行った。
なんだか台風が通り過ぎたみたいだ。
あっけに取られて彼女なんて一言も発せずにいる。
「……寝よっか。」
なんかもう喧嘩とかどうでも良くなったよ。
いつの間にか彼女も泣き止んでるしね。
俺たちは一時停戦してその日は眠りについた。
「あの人一体何なの?」
朝起きて、彼女が発した第一声がそれだった。
「何なんだろうね。」
俺だって知りたい。
「そんな事より、早くしないと仕事遅れるよ。」
「うーん。行きたくなーい。」
嫌がる彼女をなだめすかしてなんとか家から出す事に成功する。
ほっと一息。
なんだろう。
一人になるとほっとする。
俺は出勤時間が10時なので家を出るまでに少し時間がある。
一応、昨日は沢さんのおかげで助かったし。
ちゃんとお礼も言ってなかったからちょっと隣を訪ねてみようかな。
ピンポーン。
沢さんの家のインターフォンを鳴らす。
ピンポーン。
出ない。
まだ寝てるのかな。
それとももう仕事に行ったのだろうか。
そういえば、朝から尋ねるとか非常識だったかな。
「はーい。どちらさん?」
目の前のドアが開き、寝ぼけ声と寝癖だらけの沢さんが出てきた。
「あ、すいません、こんな朝っぱらから。」
「いいよ、いいよ。俺、フリーターみたいなもんだし。今日は休みだから。お隣さんこそ、今日は休み?」
「俺は出勤10時なんで、まだちょっと時間あるんです。」
「ふーん。まぁ、入んなよ。」
「あ、じゃあお邪魔します。」
中は俺の部屋と同じで、何が違うかっていうと家具なんかがほとんどなくて部屋の真ん中に布団が敷いてあった。
「あ、今まで寝てたから布団敷きっぱなしでごめんね?。」
へらへらと笑いながら布団を3つ折りにして押し入れにしまう。
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