第1章

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かわりに押入れから出てきたのは折りたたみの机だった。 「緑茶とコーヒーどっちがいい?」 「あ、じゃあコーヒーでお願いします。」 しばらく待つと俺と沢さんの前に湯気のたったマグカップが置かれた。 「やー、昨日は随分ヒートアップしちゃってたねー。」 沢さんから先に話を切り出される。 「お恥ずかしい事ですみません。」 「いやいや、仲直りできたみたいで良かったよ。」 「仲直りというか……もう、彼女とはダメかもしれないですねー。」 「なんか訳ありな?ワケ?」 「もう、ずっと彼女とはうまく行ってないんですよ。昨日の事も、いつもは我慢できてた事が我慢できなくなって。俺、ちょっと限界かなって思っちゃいました。」 「ふーん。そうなんだね。人生は長いんだから、思い切って別れちゃえば?」 「やーでも、まだ情はあるっていうか。彼女と別れたらもう恋人できないんじゃないかっていう不安もあるし。」 あれ、何俺、こんな数回あっただけの人にこんな話してるんだろう。 「いいねぇ、そういう若い悩み。おじさん羨ましいよー。」 コーヒーをすする。 それは、ほんのり甘くて苦い。 なんかほっとする。 「あ、あのっ。また来てもいいですか。」 「うん。いつでもおいで。大抵暇してるから。」 しばらく話をして、仕事があるのでと断って俺は沢さんの部屋を出た。 ドアを開けて、また自分の部屋へ戻る。 ため息。 限界だな。 今夜、彼女に別れを切り出そう。 そう決心して仕事へ出た。
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