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一度滝壺に落ちた水は、這い上がってまた流れていく。
だけど、もしかしたら、グルグルとそこで留まっている水もあるのかもしれない。
流されるんじゃなくて、流れに乗る……。
自分の意思で前に進まなきゃ。
しばらく滝を見上げながら立たずんだ後、私は握っている手に力を込め、服部さんの顔を見上げた。
「服部さん。私……」
「え?」
「私……浮かびたいんです」
「え?ごめん。よく聞こえない……」
微かな声じゃ、服部さんの耳には届かないんだ。
服部さんが少し屈んで、耳を近づける。
「私と、ちゃんと、
付き合ってください!」
精一杯の私の言葉は、思ったよりも大きな声になって、
真っ直ぐに服部さんの耳にも届いた。
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