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服部さんは一瞬目を見開いてから、ギュッと眉間にしわを寄せた。
え……。
手放しで喜んでくれているようにはとても見えない表情だった。
「車に戻ろうか」
服部さんは、硬い表情を崩さないまま、私の耳元で囁いた。
うん。と小さく頷くと、来る時よりも早足で、今来た道を戻っていく。
喜んでくれるとばかり思っていたけど、
もしかして、迷惑……なのかな。
服部さんの手はしっかりと私を掴んでいて、離れることのないまま、言葉も交わさずに、車まで戻ってきた。
「やっぱ、暑いな……。とりあえず乗ろう」
バタンとドアが閉まると、車の中は再び二人きりの空間。
すぐに、エンジンをかけると、生暖かい風がエアコンから勢いよく吹き出してきた。
だけど、車はすぐには発進しなかった。
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