彼の行く先

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「イタリアか……遠いですね……」 私はため息をつくように言った。 国内旅行さえもほとんど行ったことはないのに、 海外なんて行ったこともなくて、 もちろんパスポートさえも取ったこともない……。 雑誌やテレビの情報で、憧れはあって、英会話も習っていた。 だけど、それは私にとってただの憧れにしか過ぎなくて。 「どっちにしても、やっぱり達己くんを変えてくれたのは優奈ちゃんだと思う。 優奈ちゃん、もし達己くんをまだ少しでも想ってくれているなら、 どうぞよろしくお願いします」 ひかりさんは、私に向かってしっかりと頭を下げた。 自分のことのように嬉しそうなひかりさんと、 ただ優しく頷いてくれた正己さん。 二人は私を応援してくれているのは分かったし、 森川くんからの手紙は、素直にうれしかった。 だけど、私は、どうしたらいいんだろう……。 「イタリアか……」 私はもう一度呟いた。
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