彼の行く先

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「勝手にいなくなって、今さら何……? もしかしてイタリアに来いとか?」 「別に、『来い』なんて書いてなかった。 ただ、イタリアにいるってことだけで」 理沙は興奮したせいか鼻息を荒くして言う。 「何それ! せっかく優奈が一人で踏ん張ろうとしてるところなのに。 波立たせるようなことを…… で、優奈はどうするつもり……? 行くの?」 「迷ってる……。 イタリアには行ったことないし、パスポートも持ってないし。 『来い』って言ってくれた方が踏ん切りが付くんだろうけど、 森川くんがどういうつもりなのかも、 よく分からないし」 「優奈の気持ちが試されてるんだよね。 相変わらずズルイな……」 理沙の森川くんへの評価は以前と変わらず良くなくて、 森川くんが退社すると知って、理沙は本当に腹を立てていた。
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