彼の行く先

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『田口。こっちに遊びに来いよ』 薄暗い階段の途中で突然立ち止まった私に、先に歩いていた理沙は振り返る。 「なんか言われた?」 「…………。 『来い』って言われた……」 「……ふーん。やったじゃん」 私は感情が高ぶって声も震えてるのに、 理沙はわかっていたとでも言うようにフッと笑う。 「……どうしよう……」 「さっき、『来いって言われたら行く』ようなこと言ってなかったっけ? あのバカは優奈が動かなきゃ何も始まらないよ? 行ってちゃんと捕まえておいで。 会いたいんでしょ?」 「う、うん」 私が、躊躇しながら首を縦に振ると、理沙は満足そうに頷いた。 「とりあえず、仕事、戻ろう」 再び歩き出した理沙の後を追いかけるように、 私もデスクに戻った。
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