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話は、もとひこが家を出た後のことでありました。
もとひこは、家を出た後にことでん円座駅から電車に乗りまして志度にあります鋼板工場へ向かって行くのでありましたが、途中の瓦町駅に着いた時に志度線のホームにつながる長いコンコースを歩いて行くことがつらくなっていましたので、駅前広場に出まして、大空をぼんやりと見つめていたのでありました。
この時、もとひこ自身は結婚生活を営んで行く自信がなくなっていましたので心のすさみが進行していたのでありました。
毎日休むことなく電車を乗り継いで志度の工場へ勤務して、決められた時間内に目標の数の製品を製造して、納期日に間に合うようにしておく…お昼はお給料引きで注文したお弁当を食べて栄養をつける…仕事が終われば家にまっすぐに帰って家族そろって晩ごはんを食べる…家族がそろって1台のテレビで家族が同じ番組を見る…休みの日は、家族がそろってショッピングモールへ行って家族の時間を過ごす…近所の家の冠婚葬祭には家族そろって出席をすること…
パターン化された暮らしの繰り返しの日々が続いているので、もとひこは心のどこかで物足りなさを感じていたのでありました。
家族主義だと言うけれど…
何のための家族主義なのだよ…
誰が満足をしていると言うのだよ…
もとひこの心の中は、さらに気持ちがわだかまっていましたので、どうすることもできなくなってしまったあげくに無断欠勤をしてしまったのでありました。
そして、そうした心のわだかまりがやがて深刻な事件を引き起こしてしまったのでありました。
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