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赤の国の外れ、そこは三姉妹が切り盛りしている小さなベーカリーショップがありました。
クリームパン、ベーコンエピ、クロワッサン、ショーウィンドウには様々な焼きたてのパンが並んでいます。
レジの端には溢れんばかりの薔薇が飾られていました。
もっとも薔薇は薔薇でも氷の薔薇だったのですが。
1番上の姉の蘭(らん)が焼きたてのパンをショーウィンドウに並べながら言いました。
「いいわねー。女の子の夢じゃない。王子様に見初められるなんて。私ももう少し若かったらねー」
蘭はセミロングの髪をバンダナできっちり後ろにまとめています。次女の蓮(れん)が2つくくりの髪をいじりながら、レジで頬杖ついて言いました。
「そうだよ~。私だったらさっさとOKしちゃうのに~。珠(たま)ったら意味わかんない」
2人の言葉に、厨房から3女の珠(たま)が少し不機嫌そうに言いました。珠は2人の姉と違ってボーイッシュなショートカットです。珠は腕まくりをして力いっぱい生地をこねながら言い返しました。
「2人ともよく言うな。変わり身早くて呆れるぜ」
蓮がレジ横の氷の薔薇を指でなぞりながら言いました。
「えー? そう? いいじゃない、王子様。爽やかで」
蓮の言葉に蘭がぶはっと吹き出しました。珠が厨房から「今、蘭が笑ったの聞こえてるんだからな」と不機嫌に言いました。
蓮はクスクス笑いながら言いました。
「もう、蘭ちゃん笑っちゃダメだってー。蒼くんは珠ちゃんのダーリンだよ?」
「おい、いい加減に――…」
珠が大きな声で言い返そうとした時、入り口の扉がバタンと大きく開きました。
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