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「珠!! マイ、スウィート!」
その言葉と共に、氷の薔薇を抱えて店に入って来たのは噂の青の国の王子様、蒼です。
色素の薄い金髪に青い瞳。見た目はどう見ても王子様です。
赤の国の女たちは青の国の男たちのことを毛嫌いしていましたが、この美しい蒼王子のことは少し気にしていました。
蒼王子のファンもいました。
しかしそれは赤の国と友好条約が結ばれる前のこと。
蒼王子が口を開けば残念な、残念王子だと赤の国に知れ渡る前の話です。
蒼は「ああ!」と叫んで、お店の床に崩れ落ちました。
「ここのパンを全てくれ! 買い占めさせてくれ! 耐えられないよ、珠が手ずから丹精込めたパンが愚鈍な赤の国の民の口に入るなんて!」
「誰が愚鈍なのよ」
長女の蘭が地に伏せる蒼王子の顔面を思い切り蹴りました。
蒼王子は「ぐっ」と声を上げ、入り口のドアに思い切り激突しました。
「何をする! まるで猿だな! この野蛮な女め」
床に伏せたまま蒼王子が蘭のことを睨みあげました。蓮が呆れたように言いました。
「あんたがどヘタクソだからでしょーが。せっかく私も蘭ちゃんも応援してあげてるのに~。どこの世界に自分の国を馬鹿にされて喜ぶ女がいるのよ」
蒼王子は珠を見上げました。珠は冷ややかな口調で言いました。
「野蛮女で悪かったな。ここに来んじゃねーって言ってんだろ。さっさと帰りやがれ」
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