第1章

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珠の髪がまるで男の子みたいな短さになった後、蓮と蘭はひときわ大きく泣きました。蓮は声を上げました。 「ごめんねえ! でも自分ではどうにもならないの! 悔しくて惨めで身を焦がされるみたいで、もう……もう……」 嫉妬は劇薬と同じ。自分ではどうにもならないのです。正気ではないのです。 赤の国の女は嫉妬を我慢出来ない。 珠は2人を許しました。情に厚い赤の国の女は今まで支えあってきた姉妹の縁を切ることなんて出来なかったのです。 翌日、珠は蒼王子に会いに行きました。終わりにするために会いに行きました。 しかし蒼王子は優しく珠を抱きしめて言ったのです。 「俺が道化になるから、何も心配しないで。イヤミな青の国の王子になればいい。そうすれば珠のお姉さんたちは俺のことなんてどうでもよくなる。嫉妬の炎に巻かれることなどなくなる。俺は珠にさえ愛されればいいんだ」 その日から蒼王子は珠に滑稽なプロポーズを繰り返しました。あえてイヤミなことを言い、姉だけでなく赤の国中の女たちの恋の熱を下げました。 「俺は青の国の王子。誰にどう思われても、この氷のような心は何も感じないよ。俺は冷たいんだ。珠以外の女なんてどうでもいい」 蒼はたまにそんなことを言います。しかしそれは嘘ではありません。青の国が反対側の国、黒の国に攻め込まれた時 顔色一つ変えずに黒の女王の首を跳ねました。 珠が蒼王子に真偽を問うと「女王の首1つで数千人の民の命が助かる」と眉一つ動かさずに言いました。 蒼王子の活躍で、黒の国と青の国の戦争はわずか1週間で終わりました。 そんな蒼王子のことも丸ごと、珠は愛しました。
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