前世とのつながり

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「なによ。怒ってるんじゃないの? それとも諦めてるの?」  朝倉が説明してくれた。 「そうじゃない。おれたちは巻き添えを食ったんじゃないんだ。それを知っている。雪江も俺たちも、そのからここへ来たんだ」 「時が来た?」 「そう、おれたちは皆、前世が桐野家や龍之介さんに係わっているってわかった。当然、雪江にもな。皆があの場にから来るべき時がきたんだ」 「え・・・・」どういうことだろうか。  朝倉と久美子の前世は、まだ聞いてはいなかった。 「久美子先生は龍之介さんの祖母だった。おれは、桐野家の筆頭家老だった。つまり、小次郎さんや孝子さまの祖父にあたる」 「ええっ、そんなことがわかったの? 一体いつ」 「一度、孝子さまが食事に来られた時にばったりと出会ってな、顔を見るなりそう言われた。その時に全部思い出したよ。今は二人分の人生の記憶を持ってる」 「私も見てもらったの。そしたら記憶がよみがえった。加藤家に嫁いでいった娘のことをずっと心配していたわ。そして・・・・自分の息子が犯した重大な事件のことも、すべて思い出した」 「じゃあ、久美子先生の前世は理子さまのお母さんだったってこと?」 「そうよ。すべてを思い出した時、雪江ちゃんにも話そうとしたの。でも、雪江ちゃんがある程度、自分でさぐりあてるべきだと感じたのよ。それまで待ってたの。こんなに早く事が運ぶとは思ってもみなかったわ」 「俺と裕子さんは、孝子さまから前世のことを知らされても、その時はピンとこなかったけど、段々断片的に思いだしかけてきて、今はやっとジグソーパズルのピースがそろった感じだ」  皆の前世が、龍之介と明知に係わっていたなんて信じられない思いだ。
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