2話。 《おやごころ》

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でもまたなんで、お金持ちなのに名もない壺がお気に入りなんだか…。 ものの価値は格や値段じゃないのね、きっと。 「で、今日がデートの日っていうのは本当なんでしょうね?」 ((ええ、もちろん。娘の予定は全て執事が把握してます。生前、娘の予定は私に報告するのが執事の決まりでした。その決まりは、今も仏前で行われています)) …なんだか、お金持ちも大変そうだ。 『ギギギ』 鉄柵がオートメーションで開きます。 ((OH,マイベイビー)) 門の中からは昨日のお譲さんが。執事を添えて。 そんな金持ち、って恰好じゃないんだけどな。 どっちかってーと素朴な感じ。 人は見た目じゃ判断できないね。 僕は顔割れしてるので、そそくさと電信柱の影に隠れます。 『ブオン』 やってきたのはスポーツカー。 「お待たせっ」 超絶さわやかナイスルックガイ!! さわやかに登場! 「待った?」 「いいえ、まってないわ大丈夫よ」 「ほんと?」 「うそ。もう昨日の夜から待ち遠しくて」 「それを言うなら僕は先週、君と別れてからずっと待ち遠しいよ」 「もう、ずるいー。でもうれしっ。きゃっ」 …なんじゃこりゃ。 ((・・・・。)) これは逆効果だったかな…。 「それじゃ、行こうか」 「ええ。山田、いってきますわね」 執事に告げると車に乗り込む。 『ブオオン』 っておい、車とか聞いてないし。 どうすんの? 『プップー』 都合よく登場してくれました、ヘイ、タクシー。 「どちらまで?」 どちらまで?は僕が聞きたいよ… 「あの車を追ってください」 お財布持つかな… ------ やってきました遊園地。 高速乗って1時間半。 「お支払は?」 「カードで…」 ((はやくはやく)) まってくれよ…。今僕は猛烈に悲しいんだ。 チケット売り場。 「カードで…」 ((はやくはやく)) まってくれって。超絶、悲しいんだから。 園内。彼氏は彼女を優しくエスコート。 ジェットコースターにコーヒーカップ。 彼女をベンチに待たせて、並んで買ったはソフトクリーム。 「やだー、たくちゃん。口の横、ついてるよ」 (ゆびで掬って)『ペロ』 「わ、ごめん」 「うふふ…」 なかむつましいじゃあないですかー(棒読み) お化け屋敷にアシカショー。
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