2話。 《おやごころ》

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・・・。 確かにいやだ。 実際に”呪い”の多くはこうして言葉攻めでノイローゼを誘発させている。 「わかりましたよ…」 ((さすが!よ!大将!かっこいい!!)) 「で、どうすればいいんですか?」 ((男を追ってください)) 車で帰る男をお金がかかるタクシーで? すでに十分に呪われている気がする… 「それじゃ、またねっ」 「ええ。ごきげんよう」 豪邸の前でレディーを下したスーパーカーは、 また豪快なエンジン音を響かせながら動き出す。 「すみません、前の車を追ってください」 「はい、かしこまりました~」 「お願いします」 お願いします…。 どうか、近くに住んでいてください。 車中。 ((私は、娘を箱に入れて育てました)) でしょうね。 ((箱と言っても段ボールじゃありませんよ?シルバー製の箱で、宝石を散りばめていました)) はあ? ((冗談です)) 金持ちジョーク。 ついていくには経験がいりそうだ。 「は、は、は」 ((それでですね、それが良くないってことも分かっていたんです)) かってに懺悔モード。 ((解放してあげた方があの娘のためだと。でも、できなかった)) ・・・。 ((心配で、心配で。心配でしょうがない)) まぁ、親ですからね。 ((いずれはちゃんと解放してあげよう。でも、せめて、せめて二十歳になるまでは。それまでは、と)) …え? 二十歳になるまでは? あの娘まだ未成年なの?? ((ダメですよね、娘の人生なのに)) いや、未成年ならそこまでダメってほどでもないかも… ((歳とってからできた子供だからかもしれません。門限は12時だ、帰りが遅くなる時は連絡を入れなさい、なんだかんだとうるさくいいました)) いや、わりと普通かも。 ((もう、この歳になると、普通はどう育てているのかわからないのです)) いや、お金持ちの割に、なかなか普通に育てていると思います。 ((あの子は昨日で二十歳になりました。私は、自分で決めた約束を破っています。でも、どうか、今回だけは最後まで見届けさせてください)) …はぁ、やれやれ。 「お父さん。お譲さんはいい娘に育ってますよ」 ((そうでしょうか))
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