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「ええ。昨日、僕のお店に来たときもそれは礼儀ただしく…」
何度も何度も「すみません」と…。過剰なまでに。
((躾だけは厳しくしましたから。でもそれもよかったのか。ただただうるさい父親でしかなかったのではないでしょうか))
「そんな事はないと思います。あなたが憑いているその壺、お譲さんからもらったものでしょ?」
((え?わかりますか?))
「わかりますよ。これでもモノを見る目はもっているんです」
((おみそれしました。実はそうなんです))
しょうがないな。
成仏の足しになるなら…
「よかったら聞かせてもらえませんか?あなたがそんなに大事にするその壺の話」
((聞いてくださいますか。あれは、私の50歳の誕生日。あの娘はまだ小学生でした))
うなずく。
((たいした小遣いも渡していなかったのに、あの娘は近所のフリーマーケットでこの壺を見つけたそうです))
うむうむ。
((私が骨董品が好きなのを知っていたあの娘は、どうしてもそれを私にプレゼントしたかったらしく、幼いながらに、フリマのおじさんと交渉したそうです))
ふむふむ。
((必至の交渉におじさんもついに折れたらしく、10万円のところを1万円にまけてくれたそうです))
ふむ。ん?
((私が仕事から帰ってくると、それはもう満面の笑みで迎えてくれるのですよ。待ちきれなかったのでしょうね。玄関先、まだ私は靴も脱いでいないのに渡してくれました))
いや、小学生が1万円て…。
((パパ、みてみて!プレゼント!それはもうかわいくて))
気にしてたら先に進まないか。
よしとしよう。
((それから、私は、この壺を肌身離さず。寝るときも、風呂に入るときも、仕事に行くときも、海外出張に行くときも持ち歩きました))
よしとした側から!
いやいや壺を肌身離さずて!!
((そんな優しい娘なのです))
まあ、ツッコミたい所はありましたが。
このまま成仏の流れへ…。
「あなたが娘さんの愛情を感じていたのならば、娘さんも同じように感じていたはずですよ。骨董品もそうなんです。持ち主の愛情が伝わると、彼らはより輝く。彼らも愛情で返したいと思い、輝きを増すのです」
((ええ。骨董品となった今、よくわかります))
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