2話。 《おやごころ》

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「娘さんと骨董品を並べて話すのもなんですが、根本は同じだと思います。愛情が伝わってきたということは、相手にも伝わっているということです。娘さんは、ちゃんとあなたの愛情を感じてくれていたんじゃないですかね?」 ((与一郎さん…)) 「どうです?大きくなってからも、ちゃんと愛情を感じる瞬間、あったんじゃないですか?」 ((ええ…。たしかにありました…)) 「ならば心配することはないと思いますよ?愛情たっぷりに育った娘さんです。信じてあげませんか?」 ((与一郎さん…ありがとうございます…)) お父さんの気配が、すっと薄くなる…。 成仏の兆し。 『キキー』 車が止まる。 「お客さん、ついたみたいですよ」 せっかくの優しい気持ちをぶち壊す、 決してやさしくはないお会計の時間。 到着したのは西麻布。 願い通じず、豪邸からはたっぷり40分。 「カードで…」 男は車をコインパーキングに止め、車を降りると、 高級マンションの玄関へ。 迎え出たのは、セクシーバディなお姉さん。 「ハニー、待たせたね」 「もぉう、待たせすぎよぉ」 「ごめんごめん、仕事が長引いちゃって」 「会いたかったわ、ダーリン」 「僕もだよハニー」 『ぶちゅ…』 …なんじゃこりゃ。 その後、あわてて携帯で撮った写真を現像して、匿名でお譲さん宅へご郵送。 2人は無事、破局を迎えることになったのですが・・・。 ((成仏なんてできん。世の男どもは信用ならん。私はまだ残るぞ)) てなことで、お父様はしばらくうちの棚に居候することに決めたとか…。 ((いやー、権兵衛さん、話がわかりますねぇ)) ((お父さんこそ、わかってらっしゃる。いやぁ、うれしいねぇ)) ((私がどんな思いで育ててきたか…)) ((わかりますよ、その気持ち。うちのバカ息子なんか、親心のなんたるかってのをちっともわかってねぇ)) こうして、また一段と賑やかに。 しかし、ひどい言われよう。 僕なりにちゃんと考えてるんだけどね。 あのお嬢さんもきっと。 親の心、子知らず。 っていいますけど、子心も少しは知ってほしいもんですな…。 ま、一件落着?
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