72人が本棚に入れています
本棚に追加
「娘さんと骨董品を並べて話すのもなんですが、根本は同じだと思います。愛情が伝わってきたということは、相手にも伝わっているということです。娘さんは、ちゃんとあなたの愛情を感じてくれていたんじゃないですかね?」
((与一郎さん…))
「どうです?大きくなってからも、ちゃんと愛情を感じる瞬間、あったんじゃないですか?」
((ええ…。たしかにありました…))
「ならば心配することはないと思いますよ?愛情たっぷりに育った娘さんです。信じてあげませんか?」
((与一郎さん…ありがとうございます…))
お父さんの気配が、すっと薄くなる…。
成仏の兆し。
『キキー』
車が止まる。
「お客さん、ついたみたいですよ」
せっかくの優しい気持ちをぶち壊す、
決してやさしくはないお会計の時間。
到着したのは西麻布。
願い通じず、豪邸からはたっぷり40分。
「カードで…」
男は車をコインパーキングに止め、車を降りると、
高級マンションの玄関へ。
迎え出たのは、セクシーバディなお姉さん。
「ハニー、待たせたね」
「もぉう、待たせすぎよぉ」
「ごめんごめん、仕事が長引いちゃって」
「会いたかったわ、ダーリン」
「僕もだよハニー」
『ぶちゅ…』
…なんじゃこりゃ。
その後、あわてて携帯で撮った写真を現像して、匿名でお譲さん宅へご郵送。
2人は無事、破局を迎えることになったのですが・・・。
((成仏なんてできん。世の男どもは信用ならん。私はまだ残るぞ))
てなことで、お父様はしばらくうちの棚に居候することに決めたとか…。
((いやー、権兵衛さん、話がわかりますねぇ))
((お父さんこそ、わかってらっしゃる。いやぁ、うれしいねぇ))
((私がどんな思いで育ててきたか…))
((わかりますよ、その気持ち。うちのバカ息子なんか、親心のなんたるかってのをちっともわかってねぇ))
こうして、また一段と賑やかに。
しかし、ひどい言われよう。
僕なりにちゃんと考えてるんだけどね。
あのお嬢さんもきっと。
親の心、子知らず。
っていいますけど、子心も少しは知ってほしいもんですな…。
ま、一件落着?
最初のコメントを投稿しよう!