番外編③《ポン吉の一日》

3/3
前へ
/181ページ
次へ
人間観察、ねぇ。 こうやって見ると、そうねぇ。 人間ってなんの為に生きているんだろう。 住宅街だからかな。 この辺を歩く人の最終目的地は、ほとんどが家庭であると推測される。 パパ、今日は何を食べたいって言うかしら…。 なんて考えながらスーパーへ向かう奥さん。 今日のごはん、なんだろな? なんて話しながらお家に帰る子供たち。 急いで夕飯の支度しなきゃ、なんて足を速めるお母さん。 サラリーマンでさえ、食費を稼ぐ為に奔走しているように見えてくる。 …。 あ、そうか。 お腹減ってるんだな、僕。 「ねぇ、ポン吉、なにかわかった?」 「うん。わかったよ」 へぇ。えらいな、ポン吉は。 ご飯の事考えてる僕とは大違いだ。 「なになに?」 「人間はね…」 うんうん。 「ミミズとどんぐりが嫌いみたいだ」 「え?どういう事?」 「こないだね、旦那さんがおいしそうに春乃さんのおかゆ食べるの見てて、思ったんだ。もしかしたらミミズとどんぐりが嫌いなんじゃないかって」 「え、えっと…」 うん、ポン吉も食べ物のことだった。 「でね、確かめてたの」 「ど、どうやって?」 「ほら見て、向こう側」 通りを挟んで反対側。 お皿の上に載ったミミズとどんぐり。 そして、かろうじて読めるひらがなの文字。 “ごじゆうにどうぞ。おめしあがりください” …。 「みんな、見ても食べようとしないんだ。あんなにおいしそうなのに」 あ、あの…。 「で、わかったの。人間はミミズとどんぐりは食べないんだ」 「・・・。」 ミミズとどんぐりを食べるどうこうの前に…、道端に置いてあるものを食べませんよ? 「違う?」 「え、えっと、そうだね…」 「ほら、やっぱりね。僕の観察は正しかった。一つまた人間を理解したよ」 …。 まあ、導き出した答えは間違ってないから、いっか。 『ポンッ』 「あー、お腹へった。ごちそうを目の前にじっと我慢してたから、辛かったなー」 といって、ミミズとどんぐりをむさぼるタヌキ。 …。 あー、お腹減った。 夕飯にしよっと。 おしまい。
/181ページ

最初のコメントを投稿しよう!

72人が本棚に入れています
本棚に追加