19話。《さよなら》

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本日も我が骨董堂は平穏平和。 穏やかな時間が流れております。 「すみません~!こんにちは!」 いつからか、明るめの“すみません”になった、坪井の御嬢さんこと、美代子さん。 「こんにちは」 ここ最近、るんるんで訪れる。 「今日もご機嫌ですね」 「あら、そうですか?すみません、お恥ずかしい」 なにがすみませんなのか、は相変わらず。 「壺を見にいらしたのですか?」 美代子さんのお父さんは、数年前に他界。 でも、一人娘の美代子さんが心配で、美代子さんからもらったという壺に憑りつき、彼女の行く末を見守っています。 その壺は今うちで預かっており、美代子さんは、お父さんが憑いているとは知らずながらも、壺に話しかけるとお父さんと話しているみたいで落ち着く、と、週に何回か店を訪れます。 「ええ。そうなんですが…その前に」 と、嬉しそうに差し出すのは駅前のケーキ屋さんの紙製の箱。 「新作、入ったみたいでして」 お菓子が大好きな美代子さんは新作のスイーツが入ると、持参する。 僕も甘党なので、テイスティングをしながら、あーだこーだ語るのがここ最近のルーティン。 「じゃあ、お上がりください」 といって、居間へご案内。
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