19話。《さよなら》

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てなドタバタがありつつも、準備は整い試食会。 与吉姿のポン吉も交えてティーパーティー。 ミックスベリームースをビターチョコでコーティング。 その上を雪をイメージしたホワイトチョコのパウダーが覆い、飾り付けにクランベリーとアーモンドスライスが上品に腰を下ろす。 うん。おいしい。 「紅茶が良く合うね」 「ええ。とってもおいしい」 あっという間に平らげる僕とポン吉。 対照的に少しずつ味わう美代子さん。 ポン吉は食べ終えるとさっさと寝る始末。 美代子さんはさすが女子。 食べ終えてもトークがとまらない。 ほんと、最初の印象とは全然違って、仲良くなるとよく喋るんタイプなんだよね、美代子さんって。 「おっと、そろそろお父さんとお話ししなきゃじゃない?」 僕らの間では、もうこの壺の事を“お父さん”と呼んでいる。 「あら、本当だわ。もうこんな時間」 親子水入らずのトークタイム。 僕はポン吉を抱え、親父殿にも目配せで合図をし、部屋を退出。 そういやうちは、親父と二人きりで語り合う事、しばらくしてないな…。 ((やい、与一坊。さんざ油売りやがったんだ。次は気合いれて商品売りやがれ)) まぁ、日頃、こううるさいとさ。時間ができたら一人になりたくなっちゃうんよね…。 「すみません、ありがとうございました」 「おすみですか?」 「ええ」 いつもより、ちょっと長めだったかな。 『キキッ』 見計らったかのように自家用車が到着。 「お嬢様…」 執事の山田さん。 「それでは、黄昏さん。ごきげんよう」 「ごきげんよう」 山田さんがいると、お嬢様って感じがする。 一人の時はそこまでお嬢様って感じはしないけど、程よく上品でおしとやかな感じ。 いい子だよね。 坪井のお父さん。 育て方、間違ってませんでしたよ。
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