19話。《さよなら》

6/8
72人が本棚に入れています
本棚に追加
/181ページ
((ええ。頼もしい友達も沢山できたようだし、もう、昔のように騙されたりしないでしょう。今も、しっかりとした方を好いているようだ)) 「あ、そうなんですか。美代子ちゃん、好きな人できたんだ」 ((はは。まあ、あの子も年頃ですからな)) 「そうか。応援しなきゃ」 ((ああ、この事は秘密にしておいてください。あの子の口から打ち明けられるまで)) 「そうですね。誰から聞いたの、って話になっちゃいますもんね」 ((そうです。約束ですよ)) 「はい」 ((で、ですね、黄昏さん。お願いがございます)) 「お願い?」 ((はい。あの子と、出来る限り友達でいてあげてください)) 「はい。もちろん。ずっと友達ですよ」 ((はは。ずっと、ですか。黄昏さんらしい)) 「ん?」 ((いや、お優しいですな、黄昏さんは)) 「はあ。」 ((安心しました。どう転んでも、美代子はきっといい思い出を作ることができるでしょう)) 「ん??」 ((なんでもありません。それでは、黄昏さん。長いようで短い間でしたが、大変お世話になりました…)) 「坪井さん!?」 …気配が、徐々に薄くなっていく。 ((権兵衛さん、ポン吉くん、それから、お店のみなさんにもよろしくお伝えください…)) 「坪井さん…」 ((とても、楽しかった…)) 「伝えます。必ず」 ((ありがとう。では、さようなら…)) 「さようなら…」 ((頑張れ…美代子…)) ・・・。 完全に気配が消える。 伝えます。必ず。 でも、最後の言葉、頑張れ美代子、だけは僕からは伝える事はできない。 でも大丈夫。 美代子さんにはきっと伝わります。 声が届かなくても。 あなたと彼女の間なら。 だから安心して…。 さようなら。
/181ページ

最初のコメントを投稿しよう!