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((ええ。頼もしい友達も沢山できたようだし、もう、昔のように騙されたりしないでしょう。今も、しっかりとした方を好いているようだ))
「あ、そうなんですか。美代子ちゃん、好きな人できたんだ」
((はは。まあ、あの子も年頃ですからな))
「そうか。応援しなきゃ」
((ああ、この事は秘密にしておいてください。あの子の口から打ち明けられるまで))
「そうですね。誰から聞いたの、って話になっちゃいますもんね」
((そうです。約束ですよ))
「はい」
((で、ですね、黄昏さん。お願いがございます))
「お願い?」
((はい。あの子と、出来る限り友達でいてあげてください))
「はい。もちろん。ずっと友達ですよ」
((はは。ずっと、ですか。黄昏さんらしい))
「ん?」
((いや、お優しいですな、黄昏さんは))
「はあ。」
((安心しました。どう転んでも、美代子はきっといい思い出を作ることができるでしょう))
「ん??」
((なんでもありません。それでは、黄昏さん。長いようで短い間でしたが、大変お世話になりました…))
「坪井さん!?」
…気配が、徐々に薄くなっていく。
((権兵衛さん、ポン吉くん、それから、お店のみなさんにもよろしくお伝えください…))
「坪井さん…」
((とても、楽しかった…))
「伝えます。必ず」
((ありがとう。では、さようなら…))
「さようなら…」
((頑張れ…美代子…))
・・・。
完全に気配が消える。
伝えます。必ず。
でも、最後の言葉、頑張れ美代子、だけは僕からは伝える事はできない。
でも大丈夫。
美代子さんにはきっと伝わります。
声が届かなくても。
あなたと彼女の間なら。
だから安心して…。
さようなら。
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