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そうそう、美代子さんですが、あの後も壺を鑑賞しにいらしました。
僕からはもちろん何も言わずに、いつものように案内したのですが…。
美代子さんは、壺に対面しながら、静かに涙を流すのでした。
「どうされました?」
「すみません、なぜか涙が…」
「大丈夫ですか?」
「ええ。なぜでしょう。いつもと違う感じがして…」
「・・・。」
「でも、大丈夫です。空から、もうお前は大丈夫だ。頑張れ、っていうお父さんの声が聞こえた気がしました」
「そうですか」
「これからも、また壺を見に来てもいいですか?」
「もちろんですよ」
と、答えると、満面の笑みを浮かべるのでした。
親の心、子知らず、子の心、親も知らずだったこの二人。
今やしっかりとした絆で結ばれたようで。
よかったですね、坪井さん。
さようなら、さようなら。
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