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「ねえ、春乃。コーヒーミル、なんで変えたの?」
「ああ。あれね。臼が擦り減っちゃって、あまりよく挽けないのよ」
「ふーん。でも最近まで使ってたんでしょ?」
「うん。先々週くらいまでね。でも、新しいやつもちゃんと選んだやつだし、細かく挽けてるから…。細かいほうが香りは強くなるはずなんだけどなぁ。ミル変えた時も、最初は評判よかったんだよ?」
「ちょっと、前のミル見せてよ」
「いいよ」
春乃は、背を伸ばし、棚の一番高いところに置いてあるミルを取り出す。
女の子といえど、すらっとしている春乃は、台を使わなくても届くようだ。
うらめしや。
背の低い僕には絶対届かない。
春乃はミルをカウンターに置く。
僕もカウンターへ足を運ぶ。
((まずくなれ・・・・まずくなれ・・・))
さっきの声がよく聞こえる。
まちがいなく、犯人はこいつだ。
「ねえ、これ、修理できないの?」
「うん。調べたんだけど、なんか、職人さんが一点ものでつくったらしくて、かえのパーツが見つからないんだ」
「ふーん。その職人さんは?」
「だいぶ古いからね。みつからないよ」
「そっかー。だれか変わりに作れないのかな?」
「できないことはないだろうけど、その手間考えたら、新しいの買ったほうがはやいからねー」
そりゃそうだよねー。
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