3話。 《コーヒータイム》

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「ねえ、春乃。コーヒーミル、なんで変えたの?」 「ああ。あれね。臼が擦り減っちゃって、あまりよく挽けないのよ」 「ふーん。でも最近まで使ってたんでしょ?」 「うん。先々週くらいまでね。でも、新しいやつもちゃんと選んだやつだし、細かく挽けてるから…。細かいほうが香りは強くなるはずなんだけどなぁ。ミル変えた時も、最初は評判よかったんだよ?」 「ちょっと、前のミル見せてよ」 「いいよ」 春乃は、背を伸ばし、棚の一番高いところに置いてあるミルを取り出す。 女の子といえど、すらっとしている春乃は、台を使わなくても届くようだ。 うらめしや。 背の低い僕には絶対届かない。 春乃はミルをカウンターに置く。 僕もカウンターへ足を運ぶ。 ((まずくなれ・・・・まずくなれ・・・)) さっきの声がよく聞こえる。 まちがいなく、犯人はこいつだ。 「ねえ、これ、修理できないの?」 「うん。調べたんだけど、なんか、職人さんが一点ものでつくったらしくて、かえのパーツが見つからないんだ」 「ふーん。その職人さんは?」 「だいぶ古いからね。みつからないよ」 「そっかー。だれか変わりに作れないのかな?」 「できないことはないだろうけど、その手間考えたら、新しいの買ったほうがはやいからねー」 そりゃそうだよねー。
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