4話。 《職人の魂》

3/14
前へ
/181ページ
次へ
父、曰く ((こいつぁ、俺っちの生まれ故郷、奥州盛岡の代物よ)) 「盛岡?じゃあ、岩手の南部鉄器ですか?」 ((そうよ。南部の鉄器は世界一だからねぇ。誇らしいねぇ)) とのこと。 と、いうわけで、やってきました岩手県。 親父はあの店の地縛霊だから、ついてくることはできず、ミル姉さんと二人旅。 否、1人と1お化け旅。 傍目からは、さみしい人だよね。 「さぁ、ミル姉さん。この辺ですか?」 ((そう…。感じるわぁ。感じるわよぉ、与一さん…)) なんか…その言い方やめてほしい。 「親父の情報だと、そこの角を曲がった突き当りなんですけど」 ((不思議なものね。なんとなくわかるわ。わたしはここで産まれた…)) 角を曲がって突き当りまで進む。 広い敷地の平屋住宅。 「ごめんくださーい」 …。 応答なし。 平屋住宅の庭の先には、工房らしき建物。 とりあえず、いってみよう。 「すみませーん。おじゃましますよー」 工房の入り口まで来てあたりをうかがう。 外には誰もいない。 インターホンもないようなので、鉄の大きな扉を叩いてみるが、反応なし。 しかたがないので、そっと開けてみる。 『ズズズ…』 重い扉が、重そうな音を立ててわずかばかり開く。 『ブオオオ・・・』 「うわっ!!」 扉の隙間から、粉じんとともに、ものすごい熱気が襲ってくる。 「ケホ、ケホ」 工房の中にいる一人の若者がこちらに気づく。 「ばぁちゃん!お客さんがきてるよー!」 「はいよー」 ************ 「こんなものしがねぇけど、がまんしでね」 おばあちゃんが、母屋へと案内してくださり、お茶をだしてくださる。 「すみません、ありがとうございます」 「茶菓子は今、これしがねぇんだわ」 そういって、木の器に入った大量のおせんべいを出してくださる。 ひとりでは到底食べきれない量。 「どうぞ、おかまいなく」 せんべい、湿気ってしまわないのだろうか…
/181ページ

最初のコメントを投稿しよう!

72人が本棚に入れています
本棚に追加