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僕の名前は黄昏与一郎(たそがれよいちろう)。
僕は子供の頃からお化けが見えた。
お化け、つまり、幽霊や妖怪の類い。
産まれながらに見れたので、あまり気にしたことはない。
それらのほとんどは、危害を加えてこないし、怪しいやつには近づかなければそれですむ。
それより、気になったのは、僕の古くさい名前。
小学校では、よくからかわれたものだ。
でも、それもお化けと一緒。
気にしなければ、気にならない。
そのうち、誰もその事で僕をからかうことはなくなった。
父、黄昏権兵衛(たそがれごんべえ)はとにかく、古くさいものが大好きで、
この店も好きが高じて始めたらしい。
店に並ぶ品々は、親父の好みで集めたコレクション。
もはや、ただの趣味とも言えなくない。
なんでそんな店を継いだかって?
だって親父がうるさいんだもん。
死んだ親父はこの店に未練タラタラ。
自分を縛って成仏しない。
いわゆる地縛霊。
夜な夜な僕の枕元に立っては
((店ひらけ~、店ひらけ~))
って。
うるさくて寝れやしない。
3年間務めた銀行には特に未練なし。
ならいっそ寝れないよりはましか、ってな感じで、職場を、カウンターの裏からボロボロのレジの裏に変えました。
きっと、僕は地縛霊になる事はないでしょう。
だって、未練なんてつくれそうにないもん。
「すみません」
あ、お客さん。
スーツ姿の男性客。
「いらっしゃいませ~」
こんな店でもお客さんが来たときの挨拶だけは一流です。
だって、銀行仕込みだもん。
「お客様、本日のご用件はなんでございましょ」
手をすりすり。
って、どんな銀行やねん!
おほん、、
「なにかお探しですか?」
努めてさわやかに。
「買い取りお願いします」
『ドンッ』
おもむろにアタッシュケースをカウンターに乗せる。
『ガチャ』
お客さんは馴れた手つきでケースを開く。と、そこには木箱。
男は、ポケットから手袋を取り出し、木箱を開ける。2本の巻物。
美術品のブローカー屋さんですな。
「江戸時代初期の絵巻物です。作者は不明ですが、かなりの名作です。年式だけでも相当な値打ちがつくかと。これ、年代鑑定証」
アタッシュケースのポケットから書類を取りだす。
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