5話。 《四谷怪談?》

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4月19日。 春風そよぐ穏やかな午後。 今日もたそがれ骨董堂は平和―。 …眠い。 店主だけでなく、店全体がまどろむ午後3時。 お客様はいつも突然にやってくる。 …あたりまえだけど。 「すみません、これ、買い取ってもらえませんか?お皿なんですけど…」 二十歳そこそこのお兄さん。 「はいはい」 愛想よくご対応。 「ん~、この品ですと、、」 なかなか悪くない瀬戸物のお皿。 「3000円くらいですかね」 「え!?3000円?それだけ?なんか、るそんなんとかって平安時代の有名な人が作ったって皿だとか…」 いや、呂宋 助左衛門(ルソン・スケザエモン)は商人だから作らないし。それに平安時代じゃなくて戦国時代だし。 まぁ、どっちでもいーけど。 「んー、でもこれは違いますね…。年代も昭和になってからのものでしょうか」 家の倉庫にあったおじいちゃんの宝物でも持ち出してきたのかな? あ、わかった!車でも欲しくなって足しにしようってところでしょ。 免許取立ての頃は僕も憧れたなぁ、オープンカー。 「くそー、明日彼女の誕生日なのにぃ~~」 あら、外れた。どうやら人間の鑑定は下手らしい。 「ほんとに違うの?」 「ええ、残念ですけどこのお皿は違いますね」 だって『逸品』と言われる骨董品には、必ず作った人の魂や所有者の想いが宿ってますからね。 で、アテが外れたこのお兄さん。ちょっとかわいそうだな… ほなら、サービスしときますか。 「じゃあお兄さん、彼女さんにこんなのどうですか?」 取ってみせたのはカメオのネックレス。 「3000円にまけときますよ」 「いらねーよ、そんなもん」 おっと。そんなもんときたか… 前の持ち主が大切にしていたらしく、 なかなか暖かいオーラが出てる、いい品なんだけどね… ぼくぁ、どうやら商売も下手らしい。 ((なにやってんだい、与一坊。ちゃんと売りつけやがれ!!)) うるさいなぁ。しゃしゃり出てきたのは親父殿。 もちろん、お客さんには聞こえていない。 「じゃあ、2000円!」 「そんなもん、いらないって!彼女は10万円のバッグが欲しいって言ってるの!1年前から言われてるの!」 お客は吐き捨てると、踵を返して店を出る。 おいおい、そんなら計画的に貯めとこうよ… 「あ、お客さん、お皿…」 「いらねーよ、そんなもん!!」 おいおい…困るなぁ…
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