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4月19日。
春風そよぐ穏やかな午後。
今日もたそがれ骨董堂は平和―。
…眠い。
店主だけでなく、店全体がまどろむ午後3時。
お客様はいつも突然にやってくる。
…あたりまえだけど。
「すみません、これ、買い取ってもらえませんか?お皿なんですけど…」
二十歳そこそこのお兄さん。
「はいはい」
愛想よくご対応。
「ん~、この品ですと、、」
なかなか悪くない瀬戸物のお皿。
「3000円くらいですかね」
「え!?3000円?それだけ?なんか、るそんなんとかって平安時代の有名な人が作ったって皿だとか…」
いや、呂宋 助左衛門(ルソン・スケザエモン)は商人だから作らないし。それに平安時代じゃなくて戦国時代だし。
まぁ、どっちでもいーけど。
「んー、でもこれは違いますね…。年代も昭和になってからのものでしょうか」
家の倉庫にあったおじいちゃんの宝物でも持ち出してきたのかな?
あ、わかった!車でも欲しくなって足しにしようってところでしょ。
免許取立ての頃は僕も憧れたなぁ、オープンカー。
「くそー、明日彼女の誕生日なのにぃ~~」
あら、外れた。どうやら人間の鑑定は下手らしい。
「ほんとに違うの?」
「ええ、残念ですけどこのお皿は違いますね」
だって『逸品』と言われる骨董品には、必ず作った人の魂や所有者の想いが宿ってますからね。
で、アテが外れたこのお兄さん。ちょっとかわいそうだな…
ほなら、サービスしときますか。
「じゃあお兄さん、彼女さんにこんなのどうですか?」
取ってみせたのはカメオのネックレス。
「3000円にまけときますよ」
「いらねーよ、そんなもん」
おっと。そんなもんときたか…
前の持ち主が大切にしていたらしく、
なかなか暖かいオーラが出てる、いい品なんだけどね…
ぼくぁ、どうやら商売も下手らしい。
((なにやってんだい、与一坊。ちゃんと売りつけやがれ!!))
うるさいなぁ。しゃしゃり出てきたのは親父殿。
もちろん、お客さんには聞こえていない。
「じゃあ、2000円!」
「そんなもん、いらないって!彼女は10万円のバッグが欲しいって言ってるの!1年前から言われてるの!」
お客は吐き捨てると、踵を返して店を出る。
おいおい、そんなら計画的に貯めとこうよ…
「あ、お客さん、お皿…」
「いらねーよ、そんなもん!!」
おいおい…困るなぁ…
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