1話。 《街の外れの骨董堂》

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巻物を一瞥。 こりゃニセモノですな。 愛想よくご対応。 「…すみませんが、これはウチでは買い取れませんねぇ」 「なんだって?ほら、鑑定書だってちゃんとあるんだよ?まあ、見てよ」 「ですが、こちらの品、最近つくられたものとお見受けしますが?」 「なんですと???」 いやね、古いかどうかはすぐにわかるのよ。 ほら、物の怪っていうけどさ、あれって古いモノが化ける事が多いでしょ?江戸時代くらいの年代モノになると、物の怪にならなくても、そーゆーにおいがするのよね。 まして、『名作』と言われるものは、一目見ればわかる。 だって、必ず作者の魂がこもってるんだもの。 「これがニセモノだとでも??」 僕の鑑定勘(かんていがん)を甘くみないでね。 にやり、したり顔。 お客の顔が赤くなる。 あらら、書類を握って、ワナワナだって…。 穏便に、穏便に…。 「いや、お客様、失礼いたしました。こんな高級なもの、うちに買い取れるお金はございませんよ」 「品物、見もしないのか?」 「やや、見たら欲しくなっちゃいますからね」 「…」 「いやぁ、残念。宝くじでも当たればねぇ…」 当たったらお店たたんでますけどね、きっと。 「ふん。貧乏人が」 結構な捨て台詞。 はなから儲ける気なんてありませんよ~ 男は荷物を手荒くまとめて店を出る。 あらあら、お高級品なお巻物をそんな乱暴に扱っていいんですかね~ ((おととい来やがれ、ばぁろ~め!)) あんたは成仏してくれよ、親父。 ((塩まけ、塩!)) おいおい、あんたも逝っちまうぜ? あ、それはそれでいいか。 塩、塩っと。 パパッと親父にかけてやる。 ((なにすんだい、おたんこなす)) 「塩まけって言ったの父さんでしょ」 ((なんだって?それが親に対する口のききかたかこのやろぉ)) 「父さんよりは悪い口じゃございませんよ」 ((てんめぇ~、こちとら)) はいはい、ちゃきちゃきの江戸っ子ね。 岩手出身のくせに。 ((…なんか言ったか?)) 「なにも言ってませんよ。江戸っ子の親分さんはなにもせんと奥で寝ててくださいな」 ((寝てなんていられるかい!出来の悪いドラ息子。親にはもっと優しくせえ!こちとら死んでも死にきれんわ)) …そのようですね。 「あの…」 あ、お客さん… 「はい~」 にこにこ。
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