5話。 《四谷怪談?》

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このお皿、ルソン・スケザエモンの魂は宿ってないけど、あんたの爺さんの魂、しっかり宿っちゃってるんですけど… 仕方がないので、ひとまずカウンター裏の在庫棚においておく。 さ、帳簿つけなきゃ。 ぼちぼち月末だ。早めにやらなきゃ後々つらいからね。 え?本当につらくなるのかって? …嘘です。 末日まで溜めようが、ものの1~2時間で処理できるほどの仕事しかしていません。 トホホ。 他にすることないから、ね。 ((しくしくしく)) ほらきた、お皿のおじいさん。 知らんぷり、知らんぷり。 ((しくしくしく)) えーと、仕入れの合計がこれで、売り上げが、と…。 ((しくしく、しくしく、おーいおいおい(泣))) …あー、もうっ。 「あの、静かにしてもらえませんかね」 ((え?わし?)) 「そう。あなた」 ((聞こえるのかい?)) 「はい。だから静かにしてください」 ((ちょいと、聞いておくれよ)) 「いえ、今仕事中ですので」 ((聞いておくれよ)) 「忙しいのですみません、後にしてください」 ((聞いておくれ…)) ((年寄の頼みは聞くものじゃよ)) ((そうだそうだ!)) ((どうせ暇なんだろ!!)) 加勢するほかの骨董品たち…。 「あーもう、どうせ暇ですよ」 いまにみてろ、骨董品どもめ。ろくでもない買主が現れても売るの止めないぞ! ((ありがたや、ありがたや)) お化けに拝まれたかないわい。 「で、なんですか?」 ((おいわちゃん。いわちゃんにお皿を渡したくてな…)) 「岩ちゃん?」 ((おいわちゃん。四谷のおいわちゃん…)) おいおい、四谷のお岩さんって、怪談話じゃあるまいに。 「このお皿はそのお岩さんに渡すお皿なんですか?」 ((そうじゃ)) 一枚足りないなら届けましょってか? 「わかりました。届けましょう。四谷のどこにいるんですか?」 ((老人ホーム)) …なるほど。 こりゃまた平均年齢の高い四谷怪談になりそうですな。 いきましょうか、伊右衛門さん。 あ、伊右衛門って四谷怪談のお岩さんの旦那さんね。
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