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と、いう事で四谷の老人ホーム、たんぽぽ壮。
「すみませーん」
例のごとく、お皿を抱えてやってまいりました。
「はいはい、なんでしょう」
「すみません、いえも…じゃなかった、倉田さんの身内の者なんですが、こちらに岩さんというおばあちゃんはいませんでしょうか」
「岩さん?んー、いませんね…」
「え?いない?」
「はい」
(ですってよ、伊右衛門さん)
((いわちゃん…いるよ、いわちゃん))
「倉田さんが生前、こちらに岩さんという方がいるっておしゃってたんですがね…」
「んー、倉田さん、アルツハイマーが結構すすんでらっしゃったからねぇ…。倉田さんの担当してた娘、呼んできますね」
…伊右衛門さんの思い違いかな。
((いわちゃんはここに居るんじゃよ))
「お待たせしました」
「あ、すみません。倉田さんが岩さんという方にお世話になったみたいで、お礼を言いたいんですが…」
「ああ、岩さんね」
「ご存知ですか?」
「ええ。先月まで研修で広島の大学から来てた学生さん。西島久美さんっていうんですけどね、その子を捕まえてはお岩ちゃんって呼びかけてましたよ」
「西島さん…」
「はい。久美ちゃんもいい子だから、はいはい、岩ですよって対応してましたけどね」
「なるほど…」
((おいわちゃん…))
(人違いみたいですよ)
((おいわちゃんは、おいわちゃんぢゃ))
譲らないわけですね…。
まいったなこりゃ。
長引きそうですね。
次回へ続く~。
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