1話。 《街の外れの骨董堂》

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「わかりました。いいでしょう」 にこにこ。 「お父様が大切にされていたものらしい。4千円でいかがでしょ?」 「え?2千円ってさっき」 ((え?4千円?)) 「いいんです。少ないですがそのお金でお父様の供養になるものでも買ってさしあげてください」 「そんな…」 「いいんです。買いましょう」 「…すみません」 「またこの壺、見たくなったらお立ち寄りくださいね!売れない限り、鑑賞は無料ですから」 「すみません、ありがとうございます」 「いいえ」 女性は、買い取りの書類を記入すると、ふかぶかと頭を下げ、 「すみません、ありがとうございました」 と言い残し、去って行った。 ((てやんでぇ、2千円も高く買い取りやがって)) 「うるさいなぁ。僕のお店です。鑑定するのは僕です。勝手でしょ」 ((その壺、いくらで売るつもりでぇ)) 「売りには出しませんよ。お父様との想いでの品です。あの娘がまた買戻しに来るかもしれません」 ((このやろ、それじゃ儲からねぇじゃねぇか)) 「うるさいなぁ。親にはやさしくしろってさっき言ってたじゃないですか」 ((それは俺っちにだい!人様の親にやさしくしろなんて、ひとっことも言ってねぇやい)) 「もう遅いんで僕は寝ますよ…」 ((やい、与一坊!話は終わってねぇぞ)) 「夢枕は勘弁してくださいね。寝不足は明日の仕事に響きます」 ((たいした仕事もしねぇくせに!やい、聞いてんのか!?)) 僕は自室に入り、部屋のドアのプレートを裏返し、ドアを閉める。 『パタン』 プレートの裏には『入室禁止』の文字と、魔よけの文様。 もっと早くこのアイテムに出会っていれば銀行やめなくてもよかったかもな…。
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