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((実は、娘とその彼氏を別れさせてほしいのです))
「いや、お父さん。お気持ちはわかりますが、娘さんが選んだ人なんですから、ね」
((違うんです。ダメなんです))
認めん!ってゆー、ありがちなやつですね。
「でもね、ほら、お譲さんの人生はお譲さんのものですから」
((ダメなんです))
頑固なんですね。
「なにがダメなんですか?」
((わかりません。でもダメなんです))
「困りましたね…。それじゃ解決の糸口がつかめませんよ」
((とにかくダメなんです。私の勘が言っているのです))
これぞまさに、霊勘。
・・・ってか。
「わかりました。じゃあ、実際に彼氏を見てきたらどうですか?そしたらお父さんも納得できるかもしれません」
((そうですね!じゃあ、お願いします))
「お願いします?」
((ええ。わたしはこの壺が大のお気に入りで、壺にとり憑いてしまったもので…))
「うごけない…」
((ご名答!!さすがです!))
褒められてもうれしくない。
失敗した…。
「はぁ。わかりましたよ…。じゃあ、明日から始めましょうか」
明日は日曜日。
天気予報は晴れ。
まったくもって、デート日和だ。
ぼかぁ、しあわせだなぁ…デートの相手が壺じゃなけりゃ。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
でもって、きました日曜日。
店のドアには「臨時休業」の貼り紙。
親父が喚いていたけど知らんぷり。
おばけなんて見えません、信じません。
壺は風呂敷につつんで身体に縛り付けてます。
ベビーを抱えるママさんみたいに。
そんでもって、きました彼女のご自宅。
「これ、お宅ですか?」
((そうです))
「これ、全部?」
((そうです))
これまた見事な…
「大豪邸ですね」
((そうです))
東京の外れとはいえ、路面に50メートルは面しているだろうかという白塗りの塀。
格子の門から中をのぞけば、団地の公園よりよっぽど広いお庭の先に、お城のような立派なおうち。
((私が高いところが苦手でね・・・。3階以上はやめてくれと言って、高い建物は作らせなかったんですよ。そしたら横に広がっちゃって。お恥ずかしい))
2階建てでこの高さなの?どれだけ天井高いんですか…
「ま、まあ分かりました。とりあえずお譲さんが出てくるの待ちましょう」
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