2話。 《おやごころ》

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((実は、娘とその彼氏を別れさせてほしいのです)) 「いや、お父さん。お気持ちはわかりますが、娘さんが選んだ人なんですから、ね」 ((違うんです。ダメなんです)) 認めん!ってゆー、ありがちなやつですね。 「でもね、ほら、お譲さんの人生はお譲さんのものですから」 ((ダメなんです)) 頑固なんですね。 「なにがダメなんですか?」 ((わかりません。でもダメなんです)) 「困りましたね…。それじゃ解決の糸口がつかめませんよ」 ((とにかくダメなんです。私の勘が言っているのです)) これぞまさに、霊勘。 ・・・ってか。 「わかりました。じゃあ、実際に彼氏を見てきたらどうですか?そしたらお父さんも納得できるかもしれません」 ((そうですね!じゃあ、お願いします)) 「お願いします?」 ((ええ。わたしはこの壺が大のお気に入りで、壺にとり憑いてしまったもので…)) 「うごけない…」 ((ご名答!!さすがです!)) 褒められてもうれしくない。 失敗した…。 「はぁ。わかりましたよ…。じゃあ、明日から始めましょうか」 明日は日曜日。 天気予報は晴れ。 まったくもって、デート日和だ。 ぼかぁ、しあわせだなぁ…デートの相手が壺じゃなけりゃ。 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ でもって、きました日曜日。 店のドアには「臨時休業」の貼り紙。 親父が喚いていたけど知らんぷり。 おばけなんて見えません、信じません。 壺は風呂敷につつんで身体に縛り付けてます。 ベビーを抱えるママさんみたいに。 そんでもって、きました彼女のご自宅。 「これ、お宅ですか?」 ((そうです)) 「これ、全部?」 ((そうです)) これまた見事な… 「大豪邸ですね」 ((そうです)) 東京の外れとはいえ、路面に50メートルは面しているだろうかという白塗りの塀。 格子の門から中をのぞけば、団地の公園よりよっぽど広いお庭の先に、お城のような立派なおうち。 ((私が高いところが苦手でね・・・。3階以上はやめてくれと言って、高い建物は作らせなかったんですよ。そしたら横に広がっちゃって。お恥ずかしい)) 2階建てでこの高さなの?どれだけ天井高いんですか… 「ま、まあ分かりました。とりあえずお譲さんが出てくるの待ちましょう」
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