第三話 オネエ妖怪が僕っ子をプロデュース

2/4
前へ
/19ページ
次へ
「うわあああああ!」 夜道に哀れな子羊の叫び声が響く。 最近は噂が広まり、地元の人は恐れをなしてあまり通らなくなったこの道に、よそ者のイケメンが通りかかったのが運のつき。 脱兎のごとく逃げ出したイケメンの後姿を、うっとりとした表情のオネエが見つめていた。 「ほんと、サイッテー。」 僕は相手にしなければいいのに、あまりの醜態につい声に出してしまった。 オネエ妖怪垢舐めは、振り向いて憮然とした。 「何よ、食事しただけじゃない。私に飢え死にしろっていうの?」 僕は溜息をついた。 「何も、こんな所で襲わなくても。銭湯とか行けばたくさん舐められるじゃん。お風呂の桶とか、浴槽だとか。」 オネエ妖怪は鼻息を荒くした。 「いやよ、風呂桶とか浴槽なんて。やっぱり生の新鮮なものがいいに決まってるじゃない。それにね、銭湯なんてジジイしか居ないわよ!」 「若い人も居るかもしれないじゃん。」 「いいえ、経験上ほぼ皆無ね。イケメン率も低いし。私はね、グルメなの。おいしい美少年の物しか口に出来ないの!」 ああ言えばこう言う。本当に口の減らないオネエだ。 「あーあ、ここは薄暗くてなおかつ、学生が通るから、いい穴場だったのになあ。最近噂が広まっちゃって、めっきり通行人が少なくなっちゃったわ。そろそろ場所を変えようかしら。」 「贅沢言ってると、ホントに飢え死にしちゃうからね。」 僕は不思議だった。 何で僕は妖怪と普通に話してるんだろう。 「ところで、アンタ、あの翼君にはもうアタックしたの?」 唐突にオネエ妖怪がたずねてきた。 僕は名前を聞いただけで、心臓が喉元まで競りあがってきた気分になった。 「アンタには関係ないでしょ!」 僕は焦ってそう言った。 すると、オネエ妖怪は僕の周りを1周ほど周り、舐めるように見回した。 「まず、その格好じゃダメね。」 妖怪にダメだしをされた。しかもオネエに。 僕の今の格好は、ジーンズにボタンダウンのシャツ、その上から半そでのパーカーを羽織っていた。 「どこから見ても、僕ちゃんだもの。」 オネエ妖怪はフウっとわざとらしく溜息をついた。
/19ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加