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「だ、だって、しょうがないじゃん。お兄ちゃんのお古とかばっか着てたから。
服の選び方とか、わかんないんだもん。」
僕は本当に、服のセンスが無い。
「じゃあ、私が服を選んであげる。行きましょ!」
オネエ妖怪が勝手に腕を組んできた。
「ええ?今から?」
「まだ開いてるお店知ってるから。可愛い服がたくさんあるのよ。」
オネエ妖怪にぐいぐいと引っ張られて僕は連行された。
「おこんばんはぁ~。まだやってるぅ?」
お店、ってここ、廃墟じゃん。
「いらっしゃーい。」
僕は奥から出てきた店員にびっくりして短く「キャッ」と叫んだ。
貞子だ、貞子出てきたー。
「今日はね、珍しいお客さん連れてきたのよ。なんと、人間。」
何がおかしいのか、オネエ妖怪はくすくすと笑い始めた。
妖怪ギャグなのか、これ。
「この子に似合う、女の子らしい、可愛い服を見繕ってくれる?」
そう貞子に言うと、おもむろに古い箪笥を開いた。
その中からにゅーっと手が出てきたので僕はまた驚いて
今度はしりもちをついてしまった。
「箪笥の付喪神よ。」
オネエが言った。
その手には、ヒラヒラのフリルのついたピンクのブラウス、ピンクの
ヒラヒラのミニスカート、これまたピンクのカチューシャとピンクの靴が握られていた。
これって、まるで姫ファッションじゃん。
「こんなの、恥ずかしくて着れないよ。」
僕は難色を示した。
「何言ってんのよ。アンタなんてこれくらいしないと、女の子に見えないでしょ?」
いちいち引っかかる、棘のある言い方。
僕はしぶしぶ試着室で試着した。
「フーン、なんとか女の子に見えるわね、これで。」
なんだか足元がミニスカートのせいでスースーする。心もとない。
「僕、お金持ってないよ?」
「いいわよ、今回は私がプレゼントするわ。
いい?今度お祭りがあるでしょ?翼君を誘うのよ。
この服を着て行きなさい。」
「えーーー、無理無理無理!僕から誘うなんて。」
「何言ってんのよ。こういう時こそチャンスじゃない!
ほんと見てるだけで何の進展もない。アンタ見てると
イライラしちゃうのよ。私だったら、もっとガンガン行くけどね!」
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