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「オッス、みなみ!」
後ろから、バンと背中を叩かれ、振り向くと翼が満面の笑みで立っていた。
僕の心臓はバクバクし、体温は急上昇した。
「何赤い顔してんだ?熱でもあんのか?」
翼は僕におでこをくっつけてきた。
わー、そんなことしたら、僕の心臓、壊れちゃうよ。
翼の顔がこんな近くに。
「やめてよ、もう。顔近いよ!」
「わりーわりー。そりゃそうと、俺、昨日新しいゲーム買ったんだ。今日、俺んちで一緒にやらねえ?」
翼がそう誘ってきた。
僕は舞い上がってしまった。
「う、うん。行く。」
僕は答えた。
「よっしゃ、決まり~。じゃあ日向(ひなた)と日向子(ひなこ)ちゃんも呼ぶからな。」
そう言うと、翼は携帯を取り出して、二人に連絡を取り始めた。
なんだ、二人っきりじゃないんだ。
何を期待してたんだろう、僕は。
「んじゃ、あとでなー。着替えてこいよー。」
そう言うと翼は自宅のほうへと走って帰って行った。
その日、翼のうちで、新作のゲームをして、夕方日が暮れてから
日向子と一緒に歩いて自宅へ帰った。
日向子は、かわいいけどサバサバした性格で男の子にも人気がある。
日向子の自宅との分かれ道で、日向子に手を振り、別れた。
女の子の一人歩きは危ないけれど、今のところ僕は
あまり女の子に見えないので、そういう危うい目に遭ったことがない。
だけど、僕はその日初めて、痴漢に遭う事になった。
後ろから僕に近づいているのに気付かず、そいつはいきなり
僕に抱きついて、首筋を舐めたのだ。
「ひぃぃぃぃぃぃぃ!」
今までに無いような甲高い悲鳴が出た。
振り向くとそこには、驚愕の表情を浮かべた20代後半くらいの
背の高い痩身のどこから見ても女装の男が立っていたのだ。
「何よ、アンタ。女の子なの?」
そう言うと、そいつは汚らわしいそうに、自分の舌をハンカチでぬぐい始めた。
「オ、オカマの変態!」
僕は叫んだ。
「し、失礼な子ね!オカマの変態って何よ!最近はね、私のようなのをオネエって言うのよ!アンタ、紛らわしい風体してんじゃないわよ。かわいい僕ちゃんだと思ったのに!」
僕はそう罵られて頭にきた。
「痴漢が偉そうに何だよ!警察呼ぶからね!」
僕はそう言い、携帯を取り出した。
そいつはニヤニヤしながら言った。
「どうぞどうぞ、お呼びなさい。私は絶対に捕まらないから。」
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