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日向子は元気いっぱいで、明るくてかわいい。
誰にも同じように優しいし、スポーツも勉強もできる。
しかも空手道場に通ってて、そこいらの男よりずっと強い。
僕はと言えば、チビで痩せっぽちで、胸なんてほとんど無い。
髪の毛もショートカットでまるで男の子みたいで、
しかも自分のことを僕って言っているし。
とてもかなわないよ。
僕がそんなことをウジウジ考えていると翼が僕の肩を抱いて
「昨日、大丈夫だったか?なんか変な噂があるみたいだから。まあ途中まで日向子と一緒だから百人力だけどね。」
と顔を覗き込んできた。
「百人力って誰のことよ!」
後ろから翼は日向子のカバンでポンと叩かれた。
そんなに優しくしないでよ。
僕、諦めきれなくなるよ。
「また、やろうぜ、ゲーム。土曜日、俺んち集合な!」
そう言って自分の席についた。
別に断る理由もないけど。きっとまた、日向子たちも呼ぶよね。
僕は一人で切なくなった。
僕は部活の片付けで少し遅くなってしまい、下校するころには、とっぷり日が暮れていた。
僕はまたあの道を通って帰らなければならない。
他に回り道が無いのだ。
薄暗い夜道の昨日と同じ場所にやはり、それは立っていた。
見えているけど、あえて僕は無視を決めることにした。
「今お帰り?今日は随分と遅いわね。」
ちっ、話しかけてきた。無視だ、無視。
「あら、生意気に無視?」
僕はプチっと何かが切れた。
「当たり前じゃないの。昨日首を舐めてきたオネエの妖怪なんか、用なんてあるはずがない!」
「あれは事故よ。私だって選ぶ権利あるわあ。」
ムカツク、ムカツク、ムカツク~。
何でこんなオネエ妖怪にバカにされなきゃなんないのよ!
ずんずんと僕は進む。
するとオネエ妖怪がついてきた。
「なんか、今日のアンタ荒れてるわねえ。何かあったの?」
「妖怪には関係ないよ。」
「まあ、失礼ねえ。」
そんな会話をしていたら、神社のほうから、日向子と翼が出てきた。
僕は何故か声を掛けられずに、足を止めてしまった。
僕はじっと二人を見つめるだけだった。
二人で神社で会ってたの?
僕の胸がチクリとまた痛んだ。
すると、後から日向も出てきた。
なんだ、二人っきりで会ってたわけじゃないんだ。
そう思うと、ほっとした。
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