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「はあ、何でこんな事になっているんだ……」
そう言って、俺は大きなため息をついた。すると、近くにいた男がおいおいと言いながら俺の目の前に来ると、
「いきなりそれか?ったく、警視庁の刑事もたるんでるなあ~。若いんだからもっとシャキッとせんか、シャキッと」
そう言って俺の頭に軽くチョップする。それを受け止める俺を見て男はにやりと笑う。その口にくわえているのはタバコかと思いきや、棒付きキャンディーである。
すると、もう1人の男が近づいてくる。坊主頭に大柄な体の男は俺の近くにいた男に呆れた表情をすると、
「まったく、こういう時にも人にちょっかい出さないでください。そういう余計な一言が悪いんだって言ったでしょうが」
「いーじゃんよ。何せあの”良士”が絶賛していた刑事だぜ?それもこんな若いのが。そりゃ構いたくなっちまうのさ」
そう言って笑う男に坊主頭の男は俺のように大きなため息をつく。それを見ている俺だったが、ふと横に人が立っていた。こちらも彼らの仲間だ。
長い髪を束ね、その横顔はとても可憐だ。しかし女性に見えるこの人物は、性別は”男性”である。
「悪いね、俺ら仕事でもこんな感じだからさあ。まあきちんとこなすから勘弁してな?」
「いや、大丈夫です。そういうの、慣れてる方ですから」
俺の言葉に苦笑する彼の顔は、本当に可憐な少女に見える。しかしまぎれもなく男性である。その上、こんな事を言っている彼もこの状況を”楽しんでいる”ようだった。
まったく、俺も何故この状況で平然としていられるのか。普通なら憂鬱になりそうな状況に動じていない。やはりこの人らも俺の知る”変人たち”と同じ波長なのだろうか。
そんな事を考えていると、いきなり銃声が響く。俺がその方向を向くと、3人も一斉に顔つきを変える。その後も何度か銃声。どうやら始まったようだ。
「さてと、それじゃあ行くとするか。お前らは”連中”の足止めな。俺はこいつを連れて親玉とご対面さ」
「了解です。まあできる限り時間を稼ぎます」
「相手は死なせちゃいけないらしいけど、抵抗したら骨の1本は良い?」
ああ、と男が頷くと2人は走り、闇の中に消えた。そしてさて、と言うと、
「行くぞ青年、きちんとついて来いよ?」
にやりと笑って見せた。
ああ、何でこんな事になったんだろうか。
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