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俺ははあ、とため息にも似た返事をした。やれやれ、いきなりそれか。今一番気にしている事をずけずけと聞いてくる。
すると俺の反応を見て高山はまあ仕方ねえさ、と笑いながら言うと、
「今回の事件を、”普通の刑事である”お前さんたちが解決しただけでも立派なもんさ。……それにああなったのは自業自得ってもんだしな」
「え?どういう事ですか?」
すると高山は何枚かの写真を手に取り、それを見ながら、
「さっき、お前さんが犯人を捕まえた家を調べてきたんだがよ。これはかなりやばいな、その犯人間違いなく外法で小鬼を呼び出して使役してたんだ。しかもこういうのは契約違反するとその代価として、そいつにとって一番大切な物を引き換えに持ってかれるのさ」
「じゃあ、田原がああなっていたのはやはり小鬼が原因だと?」
「恐らくな。ご丁寧に”契約終了でーす”と書き残してってくれたわけだしな」
めんどくさそうに高山は言うと写真を机の上に雑に放った。俺はその、当たり前だと言わんばかりに話す彼に驚愕しつつ、やはりこの人は”そういう世界の人だ”と実感させられた。
すると今まで黙っていた男が、いきなり俺の近くまで寄ってくると、
「しっかし、そんなのに初めて遭遇してよく平常通りでいられたもんだ。よほど肝が据わっているか、それとも……」
男はマジマジと俺の顔を見てくる。困惑しつつ、俺は黙って立っている。
歳はいくつだろうか、顔つきから見て20代から30代ぐらいに見えるがもっと年上かもしれない。目つきは普通で髪は後ろだけ少し長い。口にくわえているのはタバコ、ではないようだ。
やがて男は俺を見るのをやめると、振り向いて高山の方に顔を向けると、
「なあ、こいつ借りてもいい?ちょっとの期間だけ」
「な!?いきなり何言ってんですか!」
刑事を、借りる?この男、いきなりとんでもない事を言い放った。というか彼が何者か、まだ聞いていないのだが。
「ん?ああ、良いんじゃないか。こいつの上司にも俺の方から言っとくから」
「ちょ、ちょっと。話を勝手に」「そんじゃ、決まりな。おい青年」
話を遮って、男は俺に話しかけてきた。困惑する俺を尻目に男はにやりと笑うと、
「俺の名は雨井、探偵だ。しばらくよろしくー」
……もう、どうにでもなってくれ。俺は大きなため息をついた。
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