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同日、夕方五時半頃。
その日は、少し早めの退社時間だったので、俺は早めに古川家のマイホームへと帰宅しかけていた。
そのとき、俺は門の外で拓海と、刑事らしき男が二人立って話しているところを見つけた。一人は、四十代ぐらいの眉間に皺を寄せた中年男性と、もう一人は二十代後半ぐらいのちゃらんぽらんそうな見た目の若い男性である。恐らく、若い方は新米の部下だろう。そして、ひと区切りがついたのか二人の刑事は、拓海に挨拶をして別れたように後にする。
しかし、その後年配の男性の方の視線がなぜか俺に移ったように感じた。
やばい。そんなつもりではなかったのにどうやら男性はこちらに近づいてくるようだ。(加えて、新米刑事らしき男もついてくるように駆けつく)そしてーーー、
「古川涼太さん、で間違いないかな?」
と、男性は案の定俺のことを尋ねてきた。
まずいな。この展開はやはり厄介ごとに絡まれそうだ。しかし、黙秘すると怪しまれそうだと思ったのか俺は無意識に、
「あ、はい。そうですが…。」
と、何とも単調な応答をしてしまった。
普段から下っ端として社会人生活をしている律儀な性分の俺を今ここで呪いたい。俺は心の中でそう思ったが、そんな俺の心境をスルーするが如く刑事達は話を進める。
「私はこういうものでね……。」
そう言って、年配の男性は刑事手帳を見せてきた。それを見た俺は声に出して、
「刑事部部長江戸川十三(えどがわじゅうぞう)……け、刑事部?!」
と、一部だけ名前を読み上げてしまい、思わず俺は大声を出しかけてしまったので、自分で自制した。
「自分は刑事部の小泉達也っす。以後よろしくっすー。」
同じようにして若い刑事の方も軽い口調でそう紹介する。
兎にも角にも、分かったことは一番遭遇したくない事態になっていることだけは分かった。なるべく穏便に済ませよう。
「えっと………刑事さんが僕に何の御用で…」
「実はね、先程君の奥さんの古川麻悠さんにも尋ねたのだが……先日の事故のことはご存知かい?」
そう江戸川という男が聞いてきた。やはりあのときの事件のことだったか。しかし、思っていることが自分で顔に出たのか江戸川は俺のことを察して次にこう言う。
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