第1章

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ずっと増加してきた自殺者人数の減少は彼らのおかけであることを誰も知らない。 これは世には知られていないが、元自殺願望者の間で語られる「生かし屋」のおはなし。 「生かし屋」というのも誰かが言い出したもので、本当の職種は何なのかは誰も知らない。 ただ、心から人生に絶望し、自殺しようとするとふと耳元に声が聞こえてくるという。 ある者は深みのあるバリトンで。 ある者は透明感のあるテノールで。 ある者は少しハスキーなアルトで。 ある者は天使のようなソプラノで。 「お前さん、もうこれで終わりかい?」 と。 彼らはその声で心の奥底に沈み込んだ「生」への欲を取り戻すのだった。 そして気がつくと、食べかけのチョコがひとかけら、なくなっているんだそうな。
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