第二章、リミット・エクスプロージョン

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 と、ほとんど母と同じ台詞を吐いた。 「別に何も、ただの気まぐれです」 「そうか。なら邪魔だ、どけ」  靴を脱いで部屋へ上がってきた父が私の肩をつかんで乱暴にどかそうとする。私はわざとされるがままになる。壁に体がぶつかった。痛い。幸い後ろ手に隠していた包丁が体に当たることはなかった。  私は父が背中を向けたところを狙っていた。 「ブスッ」という鈍い音がした。私が父を包丁で刺したのだ。 「ドスッ、ブスッ、ブスッ」と何度も何度も執拗に滅多刺しにした。耳をつんざくよな絶叫が部屋中に木霊する。何度も何度も刺しているうちに父は完全に息途絶えた。  こうして私の精神(こころ)は完全に壊れたのだ。  翌日、私は第二の復讐を実行するべく学校へ行った。私のクラスのクラスである2ー4組の扉をあける。 「おはよう、優香さーん」  苛立たしさを増幅させるような声で私をいつもいじめてくるメンバーの一人前川裕美が声をかけてきた。彼女がその主犯格だ。 「おはよう」  満面の作り笑みをつくる。 「ああん、なんだよその顔。優香のくせに生意気なんだよ」  相手を油断させるつもりがどうやら逆効果であったらしい。苛立たしげに裕美が言った。 「……」 「おい、何とか答えろよ!」  黙っている私にさらに苛立ちを覚えた裕美が私に平手打ちを喰らわそうとしてくる。その手を私は受け止めた。 「ああん?」  しかし、当然のごとく相手は苛立たし気に私を見つめる。 「ちょっと優香の癖に調子に乗ってんじゃねよ!」  裕美が片足を振り上げ蹴りを喰らわそうとしてくる。私はそれを避ける。そしてその裕美に接近していく。 「チッ、なんなんだよ今日のコイツ!?」  裕美が舌打ちした。 「オイ止まれ!」  つかつかと足を裕美のほうへ向けて進めていく。そして鞄から包丁を取り出す。クラスにいた裕美の仲間たちとそうでないクラスの連中が一斉にざわつき始める。  私が取り出した包丁を見て裕美が青い顔をする。 「ま、まって何する気!?」  裕美の言葉を完全に無視し、私は彼女に持っていた包丁を突き立てた。父の時同様「ブスッ」という鈍い音が聞こえた。  クラス中に悲鳴が立ち上る。  私を常にいじめていたクラスメイトたちも青い顔をして後ずさる。 「さあ、復讐ゲームの始まりよ」  鬼のような狂気の微笑を浮かべて私は言った。  その日、私は私をいじめていた
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