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砂嵐で黄色に染まった空の下を三人の男女がアスファルトの道路を歩いていた。道沿いにそびえ立つビルの窓ガラスはことごとく割れてくすんだ壁を晒して延々と並んでいた。ここはかつて大都市だったのだろう。道に止まった何十台もの車から滲み出た乾いたガソリンの臭いが辺りを包んでいた。その中をボロボロの服装と顔を布で覆った三人が歩いていた。
中肉中背の男が指を差すとがっちりした体格の男と華奢な体格でボサボサの長い金髪の女がうなずいて道沿いの廃ビルに入った。
ビルの中は車の販売所のようで、フロアの真ん中に流線形の錆びたスポーツカーが置いてあった。
先頭を歩いていた男が顔の布を外して辺りを見回した。
「ここには食料はなさそうだ」
後ろを歩いていた男女も顔を覆っていた布を外した。
「ああ、そのようだ」
屈強な男も辺りを見ながら答えた。
「疲れたわ。少し休んでいかない?」
ボサボサの金髪の女がその場にしゃがみ込みながら言った。
先頭を歩いていた男が「ああ、そうしよう」と言うともう一人の男は背負っていた荷物を乱暴に床に置いた。
「この辺は何もなさそうだな。どうするエリック?」
屈強な男が訊くとエリックは荷物を下ろしながら考えた。
「メアリー、大丈夫か」
エリックが訊くとうずくまっていたメアリーは「大丈夫よ」と軽く手を振って答えた。
「前の街も人がいなかったが、ここも同じだな」
「そのようだな」
ビルの外では強い風が吹いていた。
「アンディ、水を飲んでもいいか」
「ああ、大事に飲めよ」
エリックは屈強な体格をしたアンディの了解を得て、大きな荷物の中から水筒を出して少しだけ水を飲んだ。
「ここの街は建物がよく残っているな」
アンディは天井を見渡しながら言った。
「ああ、この辺のビルは頑丈そうだからな。民家は跡形もないが」
二人が話しているとメアリーが立ち上がった。
「ちょっとトイレ探しに行ってくるわ」
「ああ、気をつけろよ」
アンディの言葉にメアリーは軽く手を挙げて奥に歩いて行った。
「しかし、俺達がここに来てもう一ヶ月だ。その間、誰もいなかった。もうこの時代には人間はいないんじゃないのか」
アンディの問いにエリックは「そうかもな」と答えながら錆びかけた時計を見ていた。
一ヶ月前…
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