第1章

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 「原因がわからない限りどうする事もできないからな」  「ああ、何せ俺達タイムスリップしたからな」  エリックとアンディも沈んだトーンで答えた。  「おかしな話よね。タイムスリップって」  「それが現実のようだからな。この状況じゃ」  「あの飛行機の中で何が起きたのかしら」  「さあな。俺が覚えていたのは前の窓際の席で何かチカチカ光っていた位だ」  「何かが機内で起きたんだろうな」  その後三人は黙って休んだ。夕方になって空がうっすらと暗くなってきた。  アンディが目を覚ましてトイレに向かった。足音につられてエリックも目を覚ました。  辺りはすっかり暗くなって目が慣れるまで時間がかかった。アンディが戻ってきた。  「ああ臭かった。吐きそうだ」  アンディは独り言を呟き椅子に座った。  「なあアンディ」  「お、おう起きていたか」  エリックの声にアンディは少し驚きながら振り向いた。  「俺達以外に本当に生物はいないのか」  「ああ、その様だな。まあゾンビがうようよ歩き回っているよりマシだろう」  「そうね。殺人ロボットが歩き回っているよりもマシだけどね」  メアリーも会話に入って来た。  「しかし死体一つない。動物もそうだ。あるのはボロボロの建物だけ」  「生物だけ分解したのかしらね」  「ああ、未来ならそういう兵器があってもおかしくないな。世界中で戦争が起きて人類滅亡ってやつか」  暗がりで三人の話し声だけが響いた。  「取りあえず無駄に動いても意味は無いから、しばらくここに留まらない?」  「そうだな」  「じゃあ俺は寝る。足がつりそうだ」  辺りは再び静寂に包まれて次の日が来た。  三人はビルの階段を上ってフロアを調べた。人影はなく静かだった。  八階に着きドアを蹴破って部屋に入ると沢山のノートパソコンが並んでいた。  「随分薄いのね。未来ではこの大きさでも安く買えるのしら」  メアリーは片手でパソコンを持ち上げながら言った。  「2210年製か、前に調べた所と大体同じだな」  アンディもパソコンを手に取って裏の日付を見ながら言った。  「これだけの端末があるって事はどこかにサーバー室があるのかしらね」  メアリーは辺りを見回した。  「あれが無線のルーターの様なものか」  エリックは部屋の壁に付けられている小型の機器を見つけるとケーブルを追いながら隣の部屋に入って行った。
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