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香澄は言葉に詰まって、
なにか次の言葉が出なかった。
高校生という言葉さえ、
懐かしさに染まっていて、
別世界のように感じるのは、
香澄が二十五歳だからかもしれない。
俊也はもうちょっと若いのかも。
なんだ、
みんな若いのねー、
と、
ひがみっぽくなりそうな自分がそこにいた。
「着いたよ。
ここだ」
俊也が、
伊福部外科と、
書いてある看板の前に車を止めた。
建物は、
白っぽい外壁で、
木目調の窓枠や、
三角屋根が目立つ、
クリニックにしてはお洒落な作りだった。
同じ敷地内の奥には、
つながった大きな家が見えていて、
そちらは住居のようだった。
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