ストーリー ストーリー

7/216
前へ
/216ページ
次へ
 「スイマセン。 怪我は?」  俊也は、 丁寧に聞く。 「あ、 肘を打っていて。 あと、 足も。 でも、 スポットのせいじゃないと思います。 風の流れがよく読めなくて」  「病院、 行きますか?」 そんなに親しい訳ではなかったのに、 俊也の対応が思いがけずきちんとしていたのに香澄は驚いた。 それを聞いていた周りのジャンパーの子がわんや、 わんやと話しかけてくる。  「家が病院って子、 来ていたよね。 そこ行ったらいいんじゃない。 なんていう子だっけ」  「え、 そんな子いた?」  「いたよ、 いた。 ほら、 髪の長い子でしょ。 高校生じゃないの?」  「ああ。 かわいい子でしょ、 ちょっと大人っぽい」  「ええと、 伊福部さんって言ったっけ」  「そうそう、 そんな名前」  「彼女に連絡とれないの?急患で頼んでみたら、 だって、 この近くでしょ」  「登録してあれば、 調べれば分かるなあ」  周りの声の方が大きくなっていた。 俊也は  「ああ、 俺分かるよ、 そこなら、 土曜の午後も診療しているから、 行ってみる?」  と、 言った。 ジャンパーの一人が  「詳しい。 なんで、 八木ちゃん、 そんなの知ってるんだろ」  と、 ふざけた調子で言っている。
/216ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加