ストーリー ストーリー

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 「スイマセン。 怪我は?」  俊也は、 丁寧に聞く。 「あ、 肘を打っていて。 あと、 足も。 でも、 スポットのせいじゃないと思います。 風の流れがよく読めなくて」  「病院、 行きますか?」 そんなに親しい訳ではなかったのに、 俊也の対応が思いがけずきちんとしていたのに香澄は驚いた。 それを聞いていた周りのジャンパーの子がわんや、 わんやと話しかけてくる。  「家が病院って子、 来ていたよね。 そこ行ったらいいんじゃない。 なんていう子だっけ」  「え、 そんな子いた?」  「いたよ、 いた。 ほら、 髪の長い子でしょ。 高校生じゃないの?」  「ああ。 かわいい子でしょ、 ちょっと大人っぽい」  「ええと、 伊福部さんって言ったっけ」  「そうそう、 そんな名前」  「彼女に連絡とれないの?急患で頼んでみたら、 だって、 この近くでしょ」  「登録してあれば、 調べれば分かるなあ」  周りの声の方が大きくなっていた。 俊也は  「ああ、 俺分かるよ、 そこなら、 土曜の午後も診療しているから、 行ってみる?」  と、 言った。 ジャンパーの一人が  「詳しい。 なんで、 八木ちゃん、 そんなの知ってるんだろ」  と、 ふざけた調子で言っている。
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