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「……何だ、何だ、みんな、お通夜の席のように突っ立ったままで」
背後から突然、表れた浦安の声で我に返る。それは里村達も同じであった。
「……紺野さん、何か分かったんですか」
割り箸を持ったまま固まっていた卓司に声を掛けたのは深瀬。その声に反応するも卓司の表情は渋い。
「う~~ん、分かったというよりは分からないと言った方が正確かな」
「どういう事です?」
「パッと見では気づかないけど、よく見れば確かに箸4膳全部にホコリやゴミが着いているし、土や砂のようなものでちょっと汚れているところもある。どうしてこんな状態になったんだろうと思ってさ」
「えっ !?」
驚きの声を上げたのは勿論、卓司と会話をしていた深瀬であったが、それはその場にいた者全員の驚きを代表して発しているに等しかった。その答えが深瀬の次の言葉になって現れる。
「そりゃあ、床に落ちていたからでしょう」
「そうなんだが……仮に、紙袋から出したばかりの未使用の割り箸を床に落としたとしても果たしてこんなに汚れるものだろうか。それに割り箸はどこから落ちたんだろうか」
言われてハッとする深瀬達。どこから落ちたのかなどは考えてもいなかったからである。深瀬は直ぐに自分のハンカチを手にして割り箸に手を伸ばし、入念に調べ始め、
「……確かに汚れてますね」
と言って納得した表情で持っていた割り箸を隣にいた神部のハンカチの中に落とす。
「経験上だけどさ、割り箸のような軽いものを落としたとしても落としただけではこんなに汚れないだろう。勿論、落とした場所や汚い場所に長時間置いておけば話は別だけど。それと、一度見ただけだから何とも言えないけど、犯行現場となったプレハブハウスの床はかなり綺麗だった」
卓司の言う事に反論する者はなく、それは後から加わった浦安も同じで、先日の親睦会が良い方に影響していると思われた。
「里村さん」
「はい」
「プレハブハウス内の掃除はいつしたか、事務の人から聞いてます?」
「いえ」
「じゃあ、それを聞いておいて下さい。それと出来れば、割り箸に付着している土が犯行現場付近の土と同じものかどうか……あっ、次いでに今日、どうすれば割り箸があんな風に落ちている事になるのか、それも調べてみましょう」
微かだが見え始めた手掛かりに里村の表情も明るい。そこへ先程出て行った若い捜査員が先の尖ったスコップを肩に担いで表れる。
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