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ピピピピピ……
「もうこんな時間か……」
自分の腕時計に目をやり、せわしなく鳴っているアラームを静かにを止めた。
(どれくらい眠っていたのだろうか……)
俺(龍崎 信也)はいつも無駄に広いと感じている黒板に目を向けた。
講義の先生の姿はなかった。そこにあったのは達筆すぎて読むことのできない字がびっしりと黒板に埋まっているだけだった。
「よっ、信也。また寝てたんだろ」
声の方を振りかえると同じ学年である成宮 徹の姿があった。
「別に寝てねぇよ……うとうとしてただけだよ」
「はっよく言うぜ。隣の女子がイビキかいて寝てたって言ってたぞw」
「うっせぇなぁ……」
こんな会話を徹とし始めたのはいつ頃だろうか……
俺はそんなことを考えながら窓の外に目をやった。
耳の奥まで徹の声は聞こえているのだが頭がついてはいかなかった。
昔のことを思い出すと何も考えられなくなるのが俺の悪いくせでもあった。
だけど今は徹の声が遠くから聞こえてくるこだまのように耳の側で響いているだけだった。
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