不思議職安

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 そこには、まるで死んだ魚のような目をした人々がひしめき合い番号が呼ばれるたび一人また一人と席を立ち加工場のベルトコンベアーにふり分けられるように案内に沿って流れていく。  築50年以上は経つであろうそこは、仕事を求める人々に仕事を紹介する公的機関。  職業安定所:通称ハローワークと呼ばれる場所。  現在はこの不況の影響でフロアには失業者が溢れ、古びた検索用パソコンを使うにも40分待ちという大盛況ぶりだ。  ___まさに、負け犬の群れだな___。  生気の無い人々の群れを、死んだ魚の様な目で見つめながら鳴海は思った。  と、同時に自分もついにこの群れの仲間入りを果たしたと思うと果てしなく落ち込んだ。  「行くかな……」  独り言を言うと、気を取り直し卒業証明書の入った容器を握り締め鳴海は受付カウンターへと向った。  ___なんかすげー見られてる___  受付カウンターに続く列に並んだまでは良かったのだが、物凄く周囲からの視線を感じる。  確かに失業者の巣窟の中にブレザーの制服姿で胸にはコサージュ右手には表彰状とか入れる筒状のアレを持ち、肩には紙吹雪の残骸をつけたチビが並んでいたらそれは目立つかもしれないと鳴海はため息をついた。
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